- 2025/12/09
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高額療養費制度見直しの基本的な考え方案公表-限度額再整理や70歳以上外来特例の検討進む
厚生労働省は、第7回「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」において、「高額療養費制度の見直しの基本的な考え方(案)」を公表しました。今回の見直し案は、医療保険制度全体の改革の一環として、高額療養費制度をどのように再設計していくかの方向性を示したものです。
見直しの議論は、令和7年5月に設置された専門委員会において進められており、高齢化の進展や医療の高度化・高額薬剤の普及に伴う医療費の増大を背景として、現役世代の保険料負担の増加や世代間の公平性の確保が大きな論点となっています。そのため、給付の重点化・効率化を図りつつ、制度の持続可能性を高める観点から、高額療養費制度の見直しが必要とされています。
現行制度については、所得区分が比較的粗く、応能負担(負担能力に応じた負担)の観点からきめ細かな設計に改める余地があることが指摘されています。このため、見直し案では、
・所得区分の一層の細分化
・各所得区分に応じた自己負担限度額の見直し
が検討されています。一方で、低所得者や長期にわたり療養が必要な方に対する配慮は維持・強化すべきとの考え方が示されており、負担増が過度にならないような措置も併せて検討されています。
70歳以上については、外来医療費に対する特例的な自己負担限度額(いわゆる外来特例)の取扱いが論点となっており、
・制度の見直し内容
・対象年齢の引上げ
・将来的な廃止の是非
といった選択肢を含めて検討することとされています。
長期療養者に対する「多数回該当」の仕組みについては、長期療養者への配慮の観点から、現行の自己負担限度額水準は維持する方向とされています。そのうえで、必要に応じて、年間ベースでの自己負担額に上限を設けること(年間上限の導入)についても検討対象とされています。
また、高額療養費制度の利用に当たって、被保険者・被扶養者が自らの医療費総額や高額療養費による給付額(還付額)を把握しやすくするため、情報提供の在り方を含めた「見える化」を進めることが示されています。さらに、特定疾病(人工透析など)に係る自己負担の特例措置についても、制度全体の公平性・持続可能性の観点から、今後その在り方を検討していくこととされています。
具体的な所得区分ごとの金額や自己負担限度額等の詳細は、医療保険制度全体の改革に関する今後の議論を踏まえて決定される予定です。施行時期については、令和8年夏以降に順次実施できるよう、関係者への周知・準備を進めることが想定されています。